2016.06.15　ブヘサ・中村固腸堂の由来

『「ブヘサ　中村固腸堂」のブヘサって何？固腸堂って何？』と、よく聞かれます。
ブヘサは明治初期に固腸堂を開業した中条武平翁の名前から、屋号として呼ばれているものです。
武平翁は京都で御典医をしており、下痢止めの固腸散などさまざまな薬を開発し、海外でも販売されていたようです。
とりわけ下痢によい「固腸散」がとてもよく効く薬と評判だったようで、第二次世界大戦後の戦士の遺稿の中にも「軍から配給される薬より、隊長が分けてくれた固腸散の方がよく効いた」と残されていることを父の知人が教えてくれ、実際に記載されている書物を目にしたことがあります。

もう何十年も前に製造されなくなってはいるのですが、今でも当時を知る方々が「ここブヘサさんやね？固腸散ある？」と買いに来られます。
そのような時は代わりの漢方薬をお渡しします。

もう、固腸散の商品自体がないのですが、先日我が家の薬箱の奥から唯一残っていた固腸散がでてきました。懐かしいです。
私が5歳くらいの時に、母と祖父が天秤を使って薬をはかり、それを薬包紙に包んで、組み立てた箱に収める、という作業を傍らで見ていた記憶がしっかりと残っています。
祖父は私が6歳の時に他界し、数年後に固腸散は製造中止となりました。
とっても優しい祖父だったことを覚えています。当時を知るお客さんにも、「あの人は困っている人を助ける懐のでかい人やった」と祖父の人柄を聞くことが多く、死後何十年も経つのに、頼ってくる方がいることからも祖父の存在を実感します。

また、古いものしか置いていない倉庫を壊すこととなり掃除した際、昔の看板も見つけました。これを捨てるのはもったいないと、持ち帰り、いつか店頭にでも生かせないかと模索中です。その際武平さんの写真も発見。

それぞれを目にすると、気持ちが引き締まりますね。

私の漢方（正確には中医学）の恩師である猪越恭也先生と初めてお話させていただいたときに、『「固腸堂」とは、腸を固めて下痢を鎮め、胃腸を強くするという意味だね。五臓の中心は胃腸にあり。とてもいい店名だね。』と言っていただき、恥ずかしながらその時初めて店名のことをちゃんと考えたかもしれません。