お客様になつめをいただきました！嬉しいです〜！
なつめは韓国料理の鶏肉と朝鮮人参のスープ『サムゲタン』にぷかぷかういているあの赤いやつです。

なつめってなかなか手に入りませんよね。
ましてや、国産のなつめなんて普通にはなかなか売ってないですよね。
国内でも全国各地にはなつめの木があるようなのですが、市場ではあまりお目にかかりません。
飛騨のほうではなつめを甘く煮たものが食べられているそうで、瓶詰めされて売っていたりしますが、味付けされていないものは珍しいですね。

そのお客様はご自宅になつめの木があるとのことで、今まで見向きもしなかったけど、漢方薬を飲み始めたことでなつめの効果を知り、自分でも食べてみようと思ったそうです。
そのままでも食べられますが、通常、実を乾燥させておけば長く持ちます。

ネットで作り方を見ながら、採ったなつめを4〜5日乾燥させ、その後20分蒸して、再度1日天日干しさせたそうです。
なつめは甘くておいしいので虫が寄ってくるようで、わざわざ乾燥のために虫よけネットなどを買い、作業したそうです。結構手間がかかっていますね。

なつめの味はほんのり甘くて独特な味ということもなくとても食べやすいです。
皮がちょっとかためではありますが、ほっとする優しい甘さで好きです。

なつめは漢方では「大棗（たいそう）」といい、結構多くの漢方薬に用いられています。
中焦の気（胃腸の気）を高めてくれるため胃腸の働きが高まり、疲れにもよいです。
また、養血安神といい、血を養って精神安定の働きもあります。血を増やすので貧血、顔色が悪い方にもよいですし、気持ちを落ち着ける働きを持つため、イライラ、不眠、多夢などにもよいです。日本人女性にはぴったりです。

漢方薬では大棗単独で使うのではなく、疲れには人参や白朮などと合わせたり、不眠には竜眼肉、当帰、酸棗仁、炙甘草などと組み合わせたりしていきます。

甘麦大棗湯（かんばくたいそうとう）という処方は突然悲しくなるような臓躁といわれる症状の時に用いるとよい漢方薬なのですが、名前にすべて使われている生薬が使われている処方で、甘草、小麦、大棗の3種類のみからなるとてもシンプルな漢方薬です。
その他にも多くの漢方処方に用いられており、薬性緩和と言って、さまざまな生薬を組み合わせる時に大棗を加えることで、処方の角を取り穏やかにまとめてくれるような働きをします。甘草も同様で、甘草はよく副作用などを心配される声もありますが、薬性緩和として使われている処方においては甘草を心配する必要はほとんどありません。
薬性緩和として大棗と甘草が配合されている漢方薬は多くありますので、今自分が服用している漢方薬の添付文書をみてみると入っている、という方も多いかもしれません。

どこかでみつけたら、そのまま食べてもよし、煮出してなつめ茶にしてもよし、お肉料理で一緒に煮込んでもよし、なので食べてみてくださいね〜。

マコモの季節ですね。といっても、もうそろそろ出回らなくなり、食べられるのも9月末ごろから1か月間くらい？でしょうか。
我が津幡町はマコモが名産です。この時期になるといろいろなメニューにして頻繁に食べますが、同じ石川県でも金沢などではちょっと珍しい存在なようですね。旦那は金沢から婿入りしてきたので、結婚して初めてマコモの存在自体を知ったらしく、その時初めて津幡町以外の人にとってのマコモの存在感の薄さに気づきました。金沢の友達にも聞いてみたら、「スーパーでこの時期たまに見かけるけど、ほとんど目にしないし滅多に食べない」と聞いて驚きました。能登の方はどうなのでしょう？

味はタケノコみたいと言われますが、タケノコよりもあくもなく、もっと軽い食感です。繊維質でサクサクっとした食べごたえもあり、クセがないのでなんにでも合います。食感もいいし、ほんのり甘い味で私は好きです。
写真は順番にマコモごはん、マコモとエリンギのニンニク炒め、マコモの天ぷらです。
マコモの肉巻き、きんぴら等、なんでも使えます。

これがマコモです。皮をむいて食べます。マコモはイネ科の植物で、黒穂菌が寄生することで根本の茎が肥大してその部分がマコモダケとして食されます。

薬膳的には寒性で体を冷やす性質があります。中国の古書である「本草綱目」にはマコモは肝・心・脾・肺・腎の五臓を利し、毒を消すという記載があるそうです。元気や血液を補ったりする「補」の働きよりも体の中の悪いものを外に出す「瀉」の働きをし、血液の浄化によいため血圧、血糖などにもよいようです。デトックス食材の一つですね。

また、菌類なのできのこなどど同じく免疫増強の働きもあります。
私たちは霊芝（れいし）などをさまざまな疾患に用いますが、菌類はとても力のある食材です。

マコモは寒性なので、冷えることが気になる方は温性のスパイスと組み合わせてマコモカレーにしてみたり、暖かいスープに加えてみるとよいと思います。

薬膳では食べ物の性質は組み合わせ方や調理法でも変わると考えます。
スパイスやニンニク、ショウガなど熱性のものと組み合わせるのも一つの方法ですし、調理法では『生→蒸す・ゆでる→炒める→揚げる』の順に熱性が加わるため、大根なども冷やしますが、大根おろしで食べるのと、大根を煮物で使うのとでは体の冷やし方は違います。ふろふき大根にしてその上に生姜味噌などをのせると冷やす性質はなくなります。

マコモが食べれるのももうわずかの期間だと思いますので、食べたことないという方は見つけたら食べてみてくださいね。

昨年の１月にご来店の２５歳の男性のご相談です。
４年前から大量の痰が出始め、病院では後鼻漏と診断されていました。
抗アレルギー剤複数と去痰薬とステロイド系点鼻薬、漢方も１種類・小青竜湯などを１年以上使用したものの全く改善されず、もしかしたら漢方専門のお店ならと思い、当店にご来店されました。

後鼻漏とは鼻漏(びろう)＝鼻水が後ろ（のど側）に流れてくる症状です。一般的に鼻炎や副鼻腔炎（蓄膿症）が原因と考えられます。この男性の場合アレルギー性鼻炎が原因と診断され、抗アレルギー剤やステロイド剤などによる治療が続けられていました。

初めてのご来店の際には私も驚きましたが、ティッシュ１箱を抱えたまま問診を受けるという様でした。
あれよあれよと使用済みのティッシュが増えていき、その様子に思わずゴミ箱を手に取り「ゴミ箱はご入用ですか？」と聞いてしまう始末。多い日は１日２箱のティッシュを使い切るとのことでした。

病院では鼻炎の治療をしっかりと受けていたので、漢方の視点からもっと別の原因を探り、病症にアプローチしていくことに納得してもらいました。

まずは東洋医学における「痰」の成り立ちから説明させてもらいました。
「痰」は体の中で生成される良くない水分と考えます。
体内に蓄積される水分は、「水（すい）」から始まり→「飲（いん）」→「湿（しつ）」→「痰（たん）」という移り変わり、矢印が右に変化していくと共に代謝しにくい老廃物となると考えます。
またその水分は五臓（肝・心・脾・肺・腎／東洋医学では体のすべての臓器をこの５つの臓にすべて分類するという考え）の中でも「脾」（消化器官全般）と「腎」と「肺」の３つの臓で代謝すると考えます。消化器系の「脾」と尿を排泄をつかさどる「腎」は水分代謝に関与するのは容易に想像できますが、「肺」で水を代謝するっていうのは東洋医学独特の考えであり、摩訶不思議な理論体型ですね。

この男性の場合、極端に「脾（消化器）」が弱い体質が問診で分かったので「脾虚痰湿（胃腸虚弱が原因で水分代謝が上手に行われず、水がたまりやすくなり痰が溜まりやすくなった状態）」と判断し、健脾利湿（けんぴりしつ／胃腸機能を高め、水分代謝を高める）を目的としたものと祛痰作用を合わせた漢方２種類を服用してもらいました。

また東洋医学で「痰」を生みやすくすると考える甘いものや脂っこいもの、夜遅くのドカ食い、冷たいものの摂り過ぎも控えてもらい、改善に協力してもらいました。ちなみに中国には「冷茶生痰（れいちゃせいたん）」という言葉があり、冷たいお茶ばかり飲むと痰を生みやすくするという意味です。

漢方を服用して徐々ではあるものの症状が明らかに改善していき、ご本人はじめご家族の方も、漢方の効果にとても驚かれていました。
継続して１年半が経った現在では１日多くてポケットティッシュ１個程度の消費まで症状が落ち着き、漢方も２日に１度少量飲むだけにまで改善しました。その間、病院の薬も服用しなくて良くなり、通う手間も省かれ、そういった点でも以前と比較して随分と過ごしやすい毎日になったと喜んで頂きました。

先日のご来店の際に「大分調子が良いので、年内中に漢方卒業目指しましょうね！」とお伝えしたところ、本人様から引き続き日常生活をしっかり管理して漢方に頼らなくても現状維持できるよう頑張りたいとのことでした。

ティッシュ１日２箱使用して１年半で１０９４個、仮に５個入りティッシュが￥３５０として、年間で￥７６,５８０の計算。
これはかなりのティッシュ代削減に協力できたかも。。。なんて（笑）

クコの実といえば、杏仁豆腐の上にのっているあの赤い実です。なかなか日常生活で食べたり料理に使うということはないかもしれませんが、甘く食べやすく、薬膳的にもとても優秀な食材なので、炒めものに加えたり、ご飯と一緒に炊いたり、クコ茶にしたりとどんどん使っていくとよいものです。スーパーの中華食材コーナーに売っていて、比較的手に入りやすい漢方食材です。
最近、シミの予防として海外のトップモデルなどにも人気で何かと注目されていますね。

クコの実は生薬名「枸杞子（くこし）」と言い、何千年も昔から薬として用いられているもので、中国最古の薬物書『神農本草経』には上品として記載されています。神農本草経には365種類の生薬が集録されているのですが、上品（多量、長期服用しても人体に害がない）、中品（体の抵抗力を養い、効果はあるがまれに毒になることもある）、下品（病気の原因となる毒を除くが毒が強く長期服用はすすめない）に分けられています。
上品である枸杞子は命を養い長生きするものとされ、「長期間食べ続けると身のこなしが軽くなり老いにくくなる」と記載されています。
日本においても江戸時代の本草学者である貝原益軒が『大和本草』に「枸杞は最良の薬菜」と絶賛し、日本の植物分類学の父である牧野富太郎博士は「長生きしたければ枸杞を食え」と書いています。
枸杞子が漢方薬として使われている代表処方は『杞菊地黄丸（こぎくじおうがん）』です。
『飲む目薬』とも言われる目に良い漢方薬です。

枸杞子自体の働きは「滋補肝腎」「明目」「潤肺」で、肝腎の働きを高め目によく、肺を潤すため乾燥による咳などにもよいです。肝と目はつながっているため、肝血を増やし、肝の働きを高めることで目のトラブルが解消されます。腎は五臓の中でも『先天の精』や『命門の火』といわれ、生命力そのものともいえる部分ですから、腎によいものは生命力を高めると言えます。そのため、昔から様々な書物に“長寿“というフレーズがよく残されているのでしょうね。

なにせ、上品ですから、怖がることもなく誰でも食せますし、特に血が不足しやすい女性にはおすすめです。内臓深くにも働きかけますし、美容効果も高いため、肝斑やシミの予防にもなります。
元北京同仁堂中医科主任医師である叢法滋先生が日本にいらっしゃった頃にちょうど研修生だった私は、「毎日、枸杞の実30ｇをコップに入れてお湯を注いでその液を飲み、最後に残った実も全部食べると健康にも美容にもダイエットにもいいんだよ」と教えていただきました。

クコの実をちょっとお茶に浮かすとか、1個2個食べるくらいではダメなんですね。30ｇというと、こんなもんです。

漢方薬はよく「結構量があるんですね」と驚かれますが、確かに、植物は力があっても一つ一つが穏やかだから、ある程度の量を取らなければいけないですよね。
当時、早速実践しはじめ、甘くておいしいし、これはいいわーと思いましたが、この量、毎日食べ続けるのは中々大変なことでした…。
どんなものでもそうですが、結局常食しないと効果ないんですよね。
今では枸杞のジュースが発売されているので実を毎日食べるよりももっと手軽でおいしく飲めてよいです。かなり濃厚なので、レモンを絞って飲むとおいしいです。

枸杞原液は純正100％果汁で保存料、香料無添加で、完全受注生産のため、常に店頭にあるわけではないのですが、現在、わずかでしたらお分けできるので気になる方はお声掛けください。